「…こんにちは、」
「うひゃあっ!?」
背後から耳元に声をかけたことで、予想以上に肩をすくめる彼女。
耳を押さえて振り向いたに謝罪の言葉を口にしながらも、自然と頬は緩んでしまう。
「驚かせちゃった?…ごめんね」
「あ、う、うん…だ、大丈夫」
「…あれ?どうしたの、それ」
「え?」
普段何も持ち歩かない彼女の手には、一輪の花。
色のない…純白の花。
でもどこか柔らかなそれは彼女の雰囲気にピッタリだ。
「さっき貰ったんだ」
「へぇ〜…もしかして、ウサちゃんからかな」
「え!?どうしてわかったの?」
きょとんと驚いた表情を見せる君に、にっこり笑顔で答える。
「僕って、案外有能なストーカーだから」
「でもそれ、アリスに対してじゃないの?」
「さぁ、どうかな?」
「でも、アタリ。ウサちゃんがね、お誕生日だからってくれたの」
「ふ〜ん」
良く見えるよう、僕の方に差し出してくれた花に手を伸ばす。
指先で触れれば、柔らかなシルクの感触。
その滑らかな手触りは、どこか女性独特の肌の感触に似ている。
「布で作ったお花なんだけど…すごい綺麗でしょう?」
「ウサちゃん、あー見えて結構器用だからね」
「チェシャ猫さんも器用そうに見えるけど」
「そう?」
「うん」
「んー、でも残念。僕も君の誕生日を祝ってあげたいけど、何もないんだよ」
「いいよいいよ!お祝いが欲しくて、うろうろしてるわけじゃなくて、お使いに出ただけだから」
「でも、折角だから何かプレゼントしたいな〜僕も」
うーん…なんて唸りながら、顎に手を当てて考えるフリ。
でも本当はね、もうとっくに君へのプレゼントは考えてあるんだ。
「ホントいいのに…」
「こういうのは気持ちの問題だからね…」
そういいながら、花よりも柔らかくしっとりとした彼女の頬へ顔を寄せ、音を立てて口づける。
ちゅっ…
「…お誕生日おめでとう、」
「チェッ、チェシャ猫さんっ!?」
「心ばかりのお祝いの気持ち、受け取ってくれる?」
にこにこ笑顔の僕の前には、どこまで赤くなっているのか今すぐベッドで確認したいぐらい赤面している彼女の姿。
チリン…
耳に鳴り響く鈴の音
それが、僕の心を冷めさせる…
「おめでとう…本当に」
君がここに来たことを後悔しないように…
ここへ来るためには、生まれなければいけないってことを、感じてくれるように
心から、の生誕を祝うよ
今年の誕生日で、初めてAre you Alice?のキャラのほぼ全員を使って書いた
一応、連続する話……です。
UPするために、コメントとタイトルを考え直しました。
なんかよーわからん見えない設定があるよーな、ないよーな…書いてる自分もわかりません(苦笑)
でもとりあえず、この話でチェシャ猫さんが言いたいのは、生まれてきて良かったと感じて欲しいってことです。
あの世界へ行ってしまった(来てしまった)ってことは…とても寂しいことだから。
想い続けているのは一人だけど、それでもちゃんと想っててくれてるんです。
そんなチェシャ猫だから、抱きしめてあげたいって思うんですよね。
そんな事した日には、美味しく食べられてしまうけどね(あっさり)